「海?」
「そう! 海行きたい! だから行こうぜ!」
「……だる」
「お前……それでも若者かよ」
  夏休み直前のこの日、亮介が予想の範囲内の提案を持ってきた。

「何かこう、亮介の下心が見えすぎて」
「男の子だもん」
「開きなおんな。まったく、あんたは」
「何、じゃあ俺が陽子さんと海に行ってもいいわけ?」
「じゃあ私も行く。海に指輪投げ捨てに」
「嘘だから!」

  やりこめられた亮介がうなだれる。
 さすがに可哀想になったので、は妥協してやることにした。

「じゃあ、新体操部で行こうよ。茉莉ちゃんたちも誘って」
「俺はと二人で」
「あ、わたるーん。夏休み、みんなで海に行かない?」
「おー、そりゃいいな! 行こうぜ、亮介!」
「あー……うん、行こうぜ」
  まったく空気の読めない航を誘って、はしてやったりと微笑んだ。他の部員たちは、亮介がと二人で行きたいと思っていることを読みとったのだろう、苦笑いしていた。

「女子部も誘うね。茉莉ちゃんとか」
「茉莉ちゃん……!」
「あ、火野くんも誘っといてね」
「火野はいらねーよ!」
「火野くんが来ないと、茉莉ちゃんも来ないと思うけど」
「よっしゃー! 火野呼びに行くぞ!」

  勇んで出て行く航を見送って、は亮介に視線を移す。完全に拗ねている。
 仕方ないな。のため息は、そう言っていた。

「亮介と二人で海って、サツキが許してくれないよ」
「……黙って行けばばれねえよ」
「ダメ。ね、花火大会は二人で行きたい」
が浴衣着てくれるなら」

  亮介の手を握って微笑んで、ご機嫌とりは完了だ。
 こんなに楽しみな夏休みがあるなら、もっと早く知りたかった。
 どこから取り出したのか、レジャーブックを開いて計画を立て始めた亮介を見ながらそう思った。
 受験勉強があるから、大した時間はとれないだろう。だが、亮介と、友人たちと、1日でも過ごせる日が増えるといい。

、泊まりで行こうな!」
「嫌です」

 それでもやっぱり下心の塊だ。
 は亮介の額を叩いて、舌を出してやった。



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